米の顔を見て、麹の機嫌をきく。
杜氏・早川 誠一さんに聞く、ひよりの麹づくり
長野の山あいにある、麹屋 ひよりの蔵。夜明け前、まだ暗い蔵の奥で、杜氏の早川 誠一さんは蒸し上がった米に手を入れます。30 年、毎日同じ仕事をしても「同じ日は一日もない」という麹づくりについて、話を聞きました。
夜明け前の、米の顔
聞き手一日は、どんなふうに始まりますか。
早川朝は 4 時に蔵に入ります。まず、米の顔を見る。前の晩に水に浸けておいた米が、どれだけ水を吸ったか。粒を指でつぶして、芯の残りかたを確かめます。ここで蒸しかたが決まるので、一日でいちばん気をつかう時間ですね。
聞き手毎日、ちがうものですか。
早川ちがいます。同じ田んぼの米でも、その年の夏の暑さで硬さが変わる。蔵の湿りけも、雨の前と後ではまるでちがう。だから決まった数字はあっても、最後は手で決めます。
麹は、毎日ちがう顔をする。
麹ができるまで
ひよりの塩麹は、米を洗うところから瓶に詰めるまで、すべて蔵の中で手をかけてつくります。おおまかな流れは、次の五つです。
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Step 01
洗う・浸す
米を研ぎ、ひと晩水に浸けて、芯まで水を吸わせます。
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Step 02
蒸す
甑(こしき)で約 1 時間。外は硬く、中はやわらかく蒸し上げます。
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Step 03
種付け
人肌に冷ました米に、麹菌の胞子をまんべんなく振りかけます。
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Step 04
寝かせる
麹室で約 48 時間。数時間おきに手を入れ、温度を整えます。
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Step 05
仕込む
できた麹に塩と水を合わせ、十日ほど熟成させて塩麹に。
手のひらが、いちばんの温度計
聞き手麹室では、どんなことを見ているのですか。
早川温度計も湿度計もあります。でも、最後は手のひらです。麹の山に手を入れて、ぬくもりと、においと、手ざわりを見る。少し甘い、栗のような香りがしてきたら、いい麹になってきた合図です。
聞き手若い職人さんには、どう伝えていますか。
早川言葉では、なかなか伝わらないんです。だから毎日、いっしょに手を入れる。三年もすると、だんだん同じところで「あ、いまだ」と思えるようになります。蔵元の日和さんも、そうやって覚えた一人です。
台所で、生きている麹
聞き手塩麹を使う人に、伝えたいことはありますか。
早川ひよりの塩麹は、火を入れていない生の麹です。瓶の中でも、まだ少しずつ働いている。だから冷蔵庫で休ませてあげてください。使うたびに、味がまるくなっていくのがわかると思います。
Recipe
杜氏のまかない塩麹のおにぎり
材料
- 炊きたてのご飯茶碗 2 杯分
- 生塩麹小さじ 1
- 海苔適量
つくりかた
- 手を水でぬらし、塩麹を手のひらに薄くのばす。
- ご飯をのせ、ふんわりと三角ににぎる。
- 海苔を巻いて、できあがり。
ポイント塩のかわりに塩麹を使うと、冷めてもご飯がかたくなりにくく、ほんのり甘みが残ります。
取材の最後に「麹は、待つ仕事です」と早川さんは笑いました。急がず、毎日の台所で、ゆっくり使ってもらえたらうれしい、と。
取材・文:ひより編集部 イラスト:ひより編集部
※ 麹屋 ひより、登場する人物・数値はすべて架空です。このページは TATAKI のデザインサンプルです。