Work 01

住宅 / 2025

鞍月の家

House in Kuratsuki

北側に大きな庇を張り出し、冬の低い日差しだけを室内の奥まで導く。雪国の暗さを、反射光でやわらげる住宅。

鞍月の家の北立面。白い庇が壁から大きく張り出し、その下に横長の窓が一つ。奥に小さな黒い付属棟。
Fig. 01北立面。張り出した庇の白い天井が、雪面からの光を受け止める。

Data概要

所在地
石川県XXXX
用途
専用住宅
構造
木造 2 階建
敷地面積
XXX㎡
延床面積
XX㎡
設計期間
2023 年 4 月 — 2024 年 8 月
竣工
2025 年 11 月
施工
XXXX

01 / Site

敷地

金沢市の郊外、田畑と住宅地が入りまじる一角です。南側には 2 階建ての隣家が迫り、北側は畑に向かって大きく開けています。冬は曇りや雪の日が続き、年に何度かは膝の高さまで雪が積もります。

最初に敷地を訪れたのは 1 月でした。南の隣家の影は午後早くに庭を覆い、反対に北側の畑は、雪の反射で驚くほど明るかった。その対比が、この住宅の出発点になりました。

配置図。敷地の北に畑、南と西に隣家、東に道路。建物は敷地の中央に置き、北側に庇の範囲を破線で示している。
Fig. 02配置図。北に畑、南に隣家。破線は張り出した庇の範囲。

02 / Issue

課題

ご家族からの要望は「冬でも明るい家に」というものでした。けれど、南から光を採ろうとすれば、隣家の影に入る大きな窓を開けることになります。窓を増やしても、冬のあいだ暗いことに変わりはありません。

  • 南の隣家にさえぎられ、冬の直射日光は昼前後のわずかな時間だけ
  • 北側の畑は、雪が積もると強い反射光を返す
  • 屋根と庇には、雪の重さに耐える強さが要る

課題は、光の量を増やすことではなく、限られた光をどこから入れ、どこに届けるかを決めることでした。

03 / Approach

設計の考え方

光の入り口を二つに絞りました。ひとつは北側です。2.4m 張り出した庇の天井を白く仕上げ、雪面からの反射光を受け止めて、横長の窓から室内の奥へ返します。北の光は一日を通して安定していて、まぶしさがありません。

もうひとつは南側の高窓です。隣家の屋根を越えて届く冬至の低い日差し(南中高度 約 30°)だけを取り込み、吹き抜けを通して 1 階の北の壁際まで届けます。夏の高い日差しは、わずかな軒の出で遮られます。

窓の数は、最初の案の半分になりました。そのぶん壁が増え、光の当たる面と影になる面が、はっきりと分かれています。

断面図。右の南側の高窓から 30 度の冬の日差しが吹き抜けを通って 1 階の北の壁際まで届き、77 度の夏の日差しは軒で遮られる。左の北側では、雪面の反射光が庇の天井で返って窓から入る。
Fig. 03断面図 A—A’。南の高窓から入る冬の日差し(実線)と、北の庇で返る雪の反射光(破線)。

04 / Material

素材

外壁は杉板の鎧張りで、塗装はしていません。雨と雪にさらされて、十年ほどで銀鼠色に落ち着きます。内壁は光をよく返す白い漆喰、床は厚さ 30mm の杉板。庇の先端だけを細い鉄のフラットバーで押さえ、屋根を薄く見せています。

どれも金沢近郊で手に入る素材です。傷や色の変化を、直すべきものではなく、住まいの“続き”として受け止められるものを選びました。

  • 杉板 鎧張りCedar siding

    外壁。無塗装で張り、時間とともに銀鼠色へ。

  • 漆喰Lime plaster

    内壁と天井。光をよく返す白。

  • 杉 厚板Cedar plank

    床。厚さ 30mm、素足に柔らかい。

  • 鉄 フラットバーSteel flat bar

    庇の先端。黒皮のまま使う。

05 / Drawings

図面

図面は掲載用に描き直したものです。1 階は北の窓に面した一続きの居間と台所、2 階は寝室と書斎を北に寄せ、南半分を吹き抜けにしています。

1 階平面図。北側の幅いっぱいの窓に面して食卓と居間、南の壁沿いに台所、東に浴室と玄関、中央に階段。
Fig. 041 階平面図。北の窓に面した居間と台所、東に水まわりと玄関。
2 階平面図。北側に寝室と書斎、南側の半分は吹き抜けで、南の壁の高い位置に窓がある。
Fig. 052 階平面図。南半分は吹き抜け。南の壁の高窓は破線で示す。
アクソメ図。建物の箱の上に、北へ大きく張り出す薄い屋根の板を持ち上げて描いている。
Fig. 06アクソメ図。屋根を持ち上げ、北へ張り出す庇と建物の関係を示す。

Voice住まい手の声

「暗い季節がいちばん長い土地なのに、冬の午後がいちばん好きな時間になりました。雪の日は、天井まで白く明るいんです。」

— 住まい手 K 様(ご夫婦とお子さま 1 人)

06 / Credits

クレジット

設計・監理
STUDIO KANNA(担当:早瀬 透、宮下 凪、中村 結衣)
構造設計
XXXX構造設計事務所
施工
XXXX工務店
造園
STUDIO KANNA(高木 灯)
図版
STUDIO KANNA(石田 湊)

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