まだ誰もいない石畳
朝の六時。玄関の格子戸をあけると、路地にはまだ夜の湿り気が残っています。まわりの店はどこも雨戸を閉めていて、聞こえるのは自分の足音と、どこかの家で米を研ぐ音くらいです。
ここに宿を開いてから、晴れた朝はできるだけ歩くようにしています。同じ道でも、季節によって光の入り方がまるで違う。お客さまに「朝はどこへ行けば」と聞かれたときに、自分の言葉で答えられるように、という理由もあります。
坂の上で、塔が見えてくる
二つ目の角を曲がると、坂の先に八坂の塔の屋根が見えてきます。昼間は写真を撮る人で立ち止まれない場所ですが、この時間は塔と自分だけ。ゆっくり見上げて、深呼吸をひとつ。
塔の下の小さなパン屋では、もう窯に火が入っています。店主とは顔なじみで、毎朝のように少しだけ立ち話をします。
この時間の東山は、まだ町の人のもの。
観光地として知られる場所にも、暮らしている人の朝があります。私たちの宿も、その町の一軒です。お客さまには、そんな東山の顔も知って帰っていただけたらと思っています。
朝の散歩、三つのすすめ
- 出発は六時半までに。七時を過ぎると、坂に人が増えはじめます。
- 歩きやすい靴で。石畳は、雨のあとよく滑ります。
- 帰りは別の路地から。行きと違う景色に出会えます。
戻ったら、朝ごはん
宿に戻るころには、台所から白味噌のいい匂いがしてきます。歩いたあとのご飯は、いつもより少しおいしい。朝の散歩の地図は、フロントでお渡ししています。どうぞ気軽にお声がけください。

