データ活用は、ツールより先に「問い」を決める ─ 最初の 90 日でやる 5 つのこと
「データを活用しよう」と BI ツールを入れたのに、半年後には誰も開いていない。よく聞く話です。つまずく会社とうまくいく会社の違いは、ツールの性能ではなく、最初に「何を知りたいか」を決めているかどうかにあります。
なぜデータ活用は定着しないのか
「データを活用しよう」と BI ツールを入れたのに、半年後には誰も開いていない。私たちが相談を受ける会社の多くが、同じ経験をしています。
当社が国内の中堅企業 320 社に行った調査(架空)では、データ活用の取り組みで「つまずいたことがある」と答えた会社が 6 割を超えました。理由として多かったのは、次のとおりです。
データ活用でつまずいた理由(複数回答)
注目したいのは 1 位です。「何を見ればよいかわからない」は、ツールの性能の問題ではありません。問いが決まらないまま、データとツールだけがそろっている状態です。
POINT
つまずきの多くは「技術」ではなく「問いがないこと」から始まります。最初に決めるべきは、ツールではなく問いです。
ステップ 1:経営の「問い」を 3 つに絞る
最初にやることは、経営として毎月くり返し知りたいことを、3 つまでに絞ることです。10 も 20 も挙げると、どれにも答えられないまま時間が過ぎていきます。
よい問いの 3 つの条件
- 答えが出たら、誰かの行動が変わる
- 毎月(または毎週)くり返し聞かれる
- 「はい・いいえ」ではなく、量や比較で答えられる
部門ごとの問いの例を挙げます。問いが具体的になるほど、必要なデータもはっきりします。
| 部門 | 問い | 必要なデータ |
|---|---|---|
| 経営 | どの事業が、いちばん利益を生んでいるか | 売上・原価・販管費 |
| 営業 | 今月、どの商談が決まりそうか | 商談・活動の履歴 |
| 店舗 | 隣の店では売れているのに、うちで売れていない商品は | POS・在庫 |
| 人事 | 辞めそうな人の兆しは、どこに出ているか | 勤怠・面談の記録 |
ステップ 2:問いに必要なデータだけをつなぐ
「全部のデータをきれいにしてから始めよう」とすると、何か月もかかります。その間に、最初の熱は冷めてしまいます。
ステップ 1 で決めた 3 つの問いに答えるのに、本当に必要なデータはどれか。多くの場合、2〜3 種類で足ります。まずはそこだけをつなぎます。
きれいなデータを待っていたら、いつまでも始まらない。問いに必要な分だけ、先につなぐ。
NOTE
項目の名前が部門ごとに違う場合(「売上金額」と「売上高」など)は、つなぐ前に「どちらを正とするか」を決めておくと、あとの手戻りが減ります。
ステップ 3:見る人と見るタイミングを決める
ダッシュボードができても、見る場面が決まっていなければ開かれません。「誰が」「いつ」「何を決めるために」見るのかを、先に決めておきます。
- 経営会議(毎月第 1 月曜):3 つの問いの答えを、最初の 15 分で確かめる
- 部長会(毎週金曜):先週から大きく動いた数字だけを見る
- 店舗の朝礼(毎朝):自店舗の昨日の数字と、エリアの平均を比べる
見る場面を決めると、必要な画面の数は自然と減ります。画面が少ないほど、使われるようになります。
ステップ 4・5:小さく試して、広げる
ステップ 4:1 つの部門で 30 日試す
いきなり全社に広げず、問いをいちばん強く持っている部門で 30 日試します。この期間に、「よく聞かれる質問」と「使われない画面」がはっきりします。
ステップ 5:使われている画面だけを広げる
30 日のあいだに使われた画面と質問だけを、ほかの部門に広げます。使われなかった画面は、思い切って消します。画面を減らすことも、立派な改善です。
最初の 90 日の進め方
ここまでの 5 つのステップを、90 日の計画にまとめると次のようになります。
DAY 1–30
問いを決め、1 部門でつなぐ
経営の問いを 3 つに絞り、必要なデータだけをつなぐ。1 つの部門で使い始める。
DAY 31–60
見る場を決め、習慣にする
会議や朝礼など、見る場面を決める。よく聞かれる質問を「定番の問い」として残す。
DAY 61–90
使われた画面を、全社へ
使われた画面と質問だけを広げ、使われなかったものは消す。
まとめ
データ活用がうまくいく会社は、特別なツールを使っているわけではありません。最初に問いを決め、必要な分だけつなぎ、見る場面を決めて、小さく試しています。
- 問いは 3 つまでに絞る
- 問いに必要なデータだけを、先につなぐ
- 見る人と見るタイミングを決める
- 1 部門で 30 日試し、使われたものだけを広げる
まずは来月の経営会議で「本当に知りたいことは何か」を、3 つ書き出すところから始めてみてください。
※ このコラムは架空の企業・人物・調査データによるデザインサンプルです。